富士通がヘルスケア特化型AIエージェント開発へ
医療機関の業務を代行、ソブリン基盤モデル開発でNVIDIAが協力
2025.08.29−富士通は27日、医療機関の経営効率化と安定的な医療の提供に向け、ヘルスケアに特化したAIエージェントの開発を進めると発表した。患者と対面し、受付や問診、診療科への案内などを行う専門特化したAIエージェントを、全体をオーケストレーションするAIエージェントが束ねる構成で、NVIDIAを開発パートナーとして連携する。年内には、先端的な医療機関と有効性の検証を行うプロジェクト体制を組み、具体的なエージェント開発を進めるとしている。
今回の共同事業は、社会課題を起点とする事業モデル「Fujitsu Uvance」の「Healthy Living Platform」上に構築される。データ構造化や相互運用監視などの多様なAIエージェントを効率的に実装し統合できる実行環境が用意され、そこにパートナーの多様なヘルスケア特化型AIエージェントを組み込むことで、広範かつ迅速な業務オペレーションの変革を支援することが狙い。
国内の医療機関は、複雑で属人化した医療業務オペレーションにより膨大な事務作業に追われているとされており、医療機関の支出における人件費の割合が43%、そのうちの16%が事務作業に当てられているという。AIエージェントで事務作業を簡素化することにより、医療従事者には診療や患者ケアに専念できる体制となり、医療機関にとっては人件費最適化と経営安定化、患者にとっても医療サービスを受ける際の患者体験の向上につながる。
ヘルスケアAIエージェントの実行基盤の構築にはNVIDIAが協力するが、とくに“ソブリン基盤モデル”が重要になるという。これは、特定の文化や慣習などへの対応を強化したAIモデルで、事前学習済みの基盤モデルをベースに、特定分野に必要な機能スキルや専門知識を学習させ、あるいは専門外の知識を取り除くことでモデルをカスタマイズ。継続的に運用しながらモデルを改善していくというもの。最新の情報を反映しながら知識を更新し、事実の正確性と文化的な適合性を維持しつつ、バイアスを管理していく。
記者説明会では、腹痛で来院した患者に「受付AIエージェント」が対応し、「問診AIエージェント」が症状などを聞き取り、「診療科分類AIエージェント」が既往歴などを確認して消化器内科に案内する−というデモンストレーションが披露された。この全体を「オーケストレーションAIエージェント」がコントロールし、AIエージェント同士の自律的な連携・協働を実現させている。
ただ、AIエージェントが収集した情報の正確性や安全性、電子カルテや既存業務システムとの連携、さらには患者がAIとのやり取りに不安を感じないことや医療従事者が安心して任せられると思える信頼性−などが課題になるという。こうしたことも踏まえて開発が進められると思われる。
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<関連リンク>:
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https://global.fujitsu/ja-jp/uvance
富士通(Fujitsu Uvance Healthy Livingのページ)
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